2021年6月2日水曜日

【太陽光発電】(11)ソーラーパネルの直列・並列接続について考えよう!

ソーラパネルの性能を最大限引き出すために、繋ぎ方の基本を確認しよう!

どうも、手先が不器用過ぎて現場でもたついてしまいます。サンドマンです。
さて、今回は久しぶりに太陽光発電の記事を更新。今回はソーラーパネルの設置配線に向けた基礎知識として、配線接続方法にまつわるあれこれについて紹介しようと思います。どうぞお付き合いください!


【直列接続と並列接続】

まずは復習がてら基本的なところから。
ソーラーパネルを複数枚直列・並列に繋ぐと、当たり前かもしれませんが、
  • 直列の場合:電圧は枚数倍(電流は変化なし)
  • 並列の場合:電流は枚数倍(電圧は変化なし)
となります。

システム構築のためには、直列・並列をうまく組み合わせて、全体の電流・電圧がチャージコントローラが許容する最大電流・最大電圧の範囲内にする必要があります

現在計画中のシステムでは、先日の記事に書いたように、同じソーラーパネルを2枚直列に繋ぎ、これを3組並列して並べる予定です(2直3並)。


合計の最大電圧・電流を計算する際には、パネル単体の最大電圧(=開放電圧)、最大電流(=短絡電流)を使って、
  • 電圧:21.6V(パネル単体の開放電圧) × 2枚  = 43.2V
  • 電流:6.17A(パネル単体の短絡電流) × 3 = 18.51A 
と計算できます。今回使用予定のチャージコントローラは最大入力電圧48V、最大入力電流60Aでして、許容範囲内に収まっていることを確認しています。

なお、電流・電圧共に許容範囲内で十分余裕がある場合には、電圧をなるべく上げる構成(直列数を増やし、並列数を減らす)とした方がよいと思われます。電流が増えると、ソーラーパネルとチャージコントローラ間の送電ロスが大きくなるためです。
(ただし各系統の開放電圧が30Vを超えると、電気工事士の資格が要ります。詳細は以前の記事参照。)

【バイパスダイオードと逆流防止ダイオード】

次に、ソーラーパネルを複数枚接続するために知っておきたい、2種類(の役割)のダイオードを説明します。それは、バイパスダイオード逆流防止ダイオード(ブロッキングダイオード)です。

●バイパスダイオード

バイパスダイオードは、ソーラーパネル同士を直列接続する際に考慮すべきダイオードです。直列接続しているパネルの一部で、影がかかり発電できない箇所ができると、その部分で発電ができないばかりか、ただの抵抗と化してしまいます。すると他の部分で発電した電力を消費してしまい、電流が流れにくくなってしまいます。流れる電流量が大きい場合、発熱し焼損を起こすリスクもあります。
そこで、一定区間ごとにバイパスダイオードを用いて電流を迂回する経路を作ります。これにより、直列接続したパネルの一部に影ができた場合でも、電流が迂回して流れ、電力の消費を抑えることができます。


市販されているソーラーパネルの多くは以前の記事で紹介した通り、バイパスダイオードが内蔵されています。パネルに内蔵されている場合には、原則として別途設置する必要はありません。

●逆流防止ダイオード

一方、逆流防止ダイオードは、ソーラーパネル同士を並列接続する際に考慮すべきダイオードです。並列接続している各系統(ストリング)のうちいずれかで、何らかの原因により発電ができなくなった場合、他の系統で発電された電流が逆流して流れ込み、電力を消費することとなります。もし流れる電流の量が大きい場合、発熱・焼損のリスクもあります。
対策の一つ(※)として、各系統ごとに逆流防止ダイオード(ブロッキングダイオード)を設置して、他系統からの電流逆流を防ぐことができます。


こちらはバイパスダイオードと異なり、市販されているソーラーパネルに内蔵されていることはほぼありません。たまに通販サイトで、「逆流防止ダイオード内蔵」と書かれているケースがありますが、単なる誤訳の可能性があるので注意しましょう。おそらくそれはバイパスダイオードです。(そもそもダイオードは逆流を防止できるものですからね)

(※)他に、ヒューズによる保護回路を用いる場合もある。

逆流防止ダイオードを選定する際は、(順方向)許容電流と(逆方向)耐電圧をよく確認しましょう。
産総研の技術資料[1] によれば、IEC/TS 62548では以下の要求があるとのことです。
  • (順方向)許容電流は、通常時に流れる電流の最大値(各系統の短絡電流)の1.4倍以上にする
  • (逆方向)耐電圧は、各系統(ストリング)における開放電圧の合計の2倍以上にする
これらが小さすぎると、通常発電時の電力損失につながったり、ダイオードが早々に故障してしまう可能性があります。

例えば今回計画中の構成であれば、以下のように計算できます。

ソーラーパネルの配線によく用いられる、MC4コネクタ付きのダイオードも市販されています。これならワンタッチ接続可能ですね。


これ↑なら許容電流30Aなので、今回のシステムには使えそう。耐電圧は不明だが、おそらく大丈夫だろう。(買ってから確認します)

なお、ソーラーパネルを並列に組まない場合には、逆流防止ダイオードは不要です。チャージコントローラが逆流防止機能を持つため、夜間など、発電していないときにバッテリーから電流が逆流することはありません。

【各パネルの電流・電圧特性を合わせよう!】

複数枚のソーラーパネルを接続する際には、すべて特性が同じソーラーパネルを使用することが最も簡単です。この場合、並列接続する際には、各系統(ストリング)ごとの枚数を全て揃えるようにしてください。これを守らずに接続すると、発電効率の低下につながる可能性があります。

同種のソーラーパネルを並列接続する際のOK・NG例です。


もし、止むを得ず異なる特性のソーラーパネルを混ぜて使用する場合には、発電効率向上のため、次の2点を守ることが必要です。
  • 直列につながっている各ソーラーパネルの短絡電流が(ほぼ)同じであること
  • 並列につながっている各系統(ストリング)の開放電圧が(ほぼ)同じであること
ちょっとわかりづらいかもなので、いくつか例を挙げてみます。

(例1)ソーラーパネルを直列につなぐ場合


(例2)ソーラーパネルを並列につなぐ場合

七転び八起き太陽光発電所さんの記事[3]には、より豊富な例が記載されているので、参考にしてみてください。

このワケを、もう少し掘り下げてみましょう。
以前の記事で、ソーラーパネルの電流-電圧(I-V)特性のイメージを説明しました。その特性図を電圧・電流それぞれ負の領域まで拡張した図が以下です。これを使って、直列・並列接続時の発電効率について考えてみます。

ソーラーパネルのI-V特性模式図
日置電機製品情報[4]を参考に作成)

短絡電流開放電圧はご覧の通りの位置にあります。最大電力点は、以前お話しした通り、電流×電圧が最大となる点です。この点を狙ってチャージコントローラの制御を行うことで、発電効率が最大化されます。
もしソーラーパネルに短絡電流を超える電流が流れこむと、バイパスダイオードにより電流が迂回されます。このとき、ダイオードやソーラーパネル自身の抵抗成分により、電圧は負となります(すなわち電力が消費される)


ここで、開放電圧が同じで短絡電流が異なるパネルを2枚直列接続した場合の発電効率を考えてみます。それぞれのI-V特性はご覧の通りとなります。
(注)イメージ図です。一部不正確な部分があります。

このとき、2枚に流れる電流は等しくなるので・・・
①の電流が流れる場合、パネルAは効率よく発電できますが、パネルBの電圧は負となります。すなわち、パネルBは発電できずただの抵抗となってしまい、さらに溢れた電流がバイパスダイオードを迂回する状態となります。
②の電流が流れる場合、今度はパネルBは効率よく発電できますが、パネルAは最大電力点から大きくかけ離れたところで使用されることとなり、大幅に発電効率が悪くなります。
以上より、流れる電流がどのくらいであっても、両方のパネルを同時に効率よく使うことができないことがわかるはずです。

次に、短絡電流が同じで開放電圧が異なる複数のパネルを2枚並列に繋いだ場合の発電効率を考えてみます。このときのI-V特性は、パネルAとパネルBの電流を足し合わせる形で表現できます。ただし、並列接続時には逆流防止ダイオードを使用することを想定して、各パネルの電流が負となる場合には、0とみなして計算することとします。すると以下の図のようになります。
(注)イメージ図です。一部不正確な部分があります。

この場合パネルA(赤)とパネルB(黄)で、そもそも最大電力点となる電圧がかけ離れていることがわかります。両方のパネルから同時に効率よく電力を得ることはできません。
これを横軸はそのままに、縦軸を電力に書き換えたイメージが以下です。
(注)フリーハンドで書いたイメージ図なので正確ではないです。ご容赦を。

ご覧の通り二山、すなわち電力が極大となる箇所が2つある形となります。
以前の記事では、MPPT方式のチャージコントローラでは、電力が最大になるように、山登り法などによる追従制御をしているものがあると説明しました。今回の場合で山登り法を使うとどうなるでしょうか。最大電力点は、「パネルBの最大電力点」ですが、条件によっては、「パネルAの最大電力点」を山の頂点と誤認識する可能性もありそうです。そうなると、得られる電力がますます小さくなってしまいます。(もっとも、巷のチャージコントローラはもっと高尚な処理をしていて、そうならないのかもしれませんが。)

ここまでの議論で、ソーラーパネルを直列接続するには各パネルの短絡電流を、並列接続する場合は各系統の電圧を合わせるべきということが、理解いただけたかと思います。

なお、ここまでの議論は、すべてのソーラーパネルに同じように日光が当たっていることを前提としています。もし一部に影ができやすい場合には、実質的に特性の異なるパネルを混ぜているのと同じ状態となりますから、注意が必要です(参考:日経クロステック記事[5]

もしどうしても電流・電圧を合わせられない場合には、各系統で使うパネルの短絡電流のみを合わせ、系統ごとにチャージコントローラを設けてしまうことで、効率を上げられる場合があります。それぞれの系統ごとに、最大電力点を狙いにいく作戦です。(詳細な効率比較は、町田らの論文[6]などが参考になります)


いかがでしたでしょうか?
次回は引き続き、バッテリーの直列・並列接続について検討する記事を掲載予定です。
それではまた!

【参考Webサイト】

なかなか今回も調べ物が大変でした。解説記事は準備に手間がかかりますね・・・
[1]産業技術総合研究所 太陽光発電の直流電気安全のための手引きと技術情報(第 2 版)
[2]日経クロステック 「発電ロスの元、『接続間違え』を甘く見ない」
[3] 七転び八起き太陽光発電所  独立系太陽光:異なる出力のパネルを組み合わせる方法
[4]日置電機 製品情報 太陽光パネル・発電 メンテナンス測定器ガイド
[5]日経クロステック QAで読み解く、利益の出るメガソーラー技術講座 <第10回>方式やメーカー、型式が異なる太陽光パネルを1台のPCSに接続しても問題ないのでしょうか?
[6]町田定之ほか:「異種太陽電池アレイから成る太陽光発電システムの最適構成」電気学会論文誌B,123,No.2,pp. 237-244


※記載項目に誤りなどございましたらお知らせください。修正いたします。

※2021/6/5 図中の誤植を修正し、一部追記しました。

(サンドマン)


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