2021年4月21日水曜日

CNCルーターをもっと使いやすくしよう!(前編)

どうも、サンドマンです。出張先のホテルでベッドの上にメガネを置いていたら、寝返りの際にフレームをへし折ってしましました・・・(泣)

さて今回は、昨年ガレージに導入されたCNCルーター「Art CNC1515(Avalon Tech)」を使い倒しつつ、より使いやすくするために悪戦苦闘した記録を2回に分けてお送りいたします!


【CNCルーター、大活躍中!】

前回の記事で通称「Styroman」の製作を行なって以降、CNCルーターは様々な方に活用してもらえるようになり、今では僕らのガレージの人気機材の一つとなりました!

近頃のヘビーユーザーは、なんといっても CNC丁稚奉公さん。今までこの手の機械を使ったものづくりの経験は少なかったようですが、試行錯誤しながらめきめきと力をつけてきています!

CNCルーターのために、3DCAD(Fusion360)を初習得
今ではほとんど自力で設計できるようになったみたい!さすがです。
作成した3Dモデルを使って・・・

早速加工スタート!
(音量注意)

専用ソフト(CNCjs)上で、今どこを加工しているか確認することができます。

そして完成!謎の授与式挙行。
これで一人前のCNCルーター使い

綺麗に削れましたね!
「d」の一部が抜けていますが、ご愛嬌。


【犠牲層の水平を出してみよう!】

そんな大人気のCNCルーターですが、より使いやすくするための課題がたくさん残っています。バリバリ使ってもらう合間で、改善や試行錯誤を少しずつ進めています!

早速取り組んだのが、犠牲層の水平出し。このCNCルーター、主構造はアルミフレームですので、組み立ての際に直角・平行を出すのは至難の業です。そこで、加工したいもの(ワーク)の下に敷く木の板(犠牲層)の水平を出してみることにしました!

まずは犠牲層を1枚ものの板に交換します。

もともとあった板を取り外し、ブラケットの位置を調整して・・・

一枚ものの板が取り付きました!
あまりホームセンターに売っていないサイズだそうで、材木店から購入したそうです。

さて、ここから登場するのが・・・
テストインジケータ(てこ式ダイヤルゲージ)!
機械屋にはお馴染み、μm単位の微小な距離の変化(変位)を測るための便利ツール。


ダイヤルゲージの使用例(モノタロウより
図はてこ式ではない通常のダイヤルゲージですが、てこ式の場合でも使い方はほぼ同様です。

下についている棒(測定子と言います)を基準としたい位置に軽く当て、このときのの指示値を0にセットします。この状態で、測りたい対象に測定子を当てた際に、針が動いた量を読み取ることで、基準との寸法差を計測することができます。


今回の場合は、測定子を犠牲層の上面に押し当てた状態で、X、Y軸を様々な位置に動かしていき、針の指示値を確認していきます。犠牲層がきっちり水平ならば、X、Y軸を動かしても針が全く動かないはず。




テストインジケータの針の位置(指示値)を犠牲層上に細かくメモ。
(見えますか?)

計測結果を元に、犠牲層の高さを微調整していきます。
ブラケットと犠牲層の間にシム板を挟みます。
なかなか苦しい体勢。

そして、調整したら再計測。
この繰り返し・・・

苦労の末、犠牲層上面の高さ(正確には、X・Y軸からなる平面との平行度)が±0.5mm程度に収まりました。木材ですから、当然材料自体の反りやうねりがあるでしょうし、湿気や温度によってもその具合は変化するでしょう。今回の調整ではこのくらいが上出来ではないでしょうか(笑)
ちなみに、より精密な調整が必要な場合は、犠牲層をCNCルーター自身で薄く削り取り水平面を作る、犠牲層よりも下(架台などの金属部品)の調整で水平を出す、などの方法が考えられます。




【軸同士の直角を出していこう!】

次に取り組んだのは軸同士の直角出しです。きちんと調整されていないと、長方形に削ろうと思ったら平行四辺形になっちゃった・・・なんてことになります。

今回はX軸とY軸(水平2軸)の直角を出していきましょう。ここでも使うのはテストインジケータ。犠牲層の上に直角な2面がある部品(イケールスコヤなど)と合わせて使います。


段取りは2ステップ。
①まず、測定子をイケールの右側面に当てて、Y軸を動かしてなぞらせます。針の動きを確認し、針がほとんど動かなくなるようにイケールの置き角度を微調整します。
②次に、測定子をイケールの奥側の面に当てて、X軸を動かしてなぞらせます。針が動く場合には、X軸とY軸が直角になっていないので、修正し、針がほとんど動かなくなるようにします。

今回の場合、直角が出ていない要因として考えられたのは、Y軸2本のスクリューナットの位置ずれでした。ずれていると下の図「NG」のように、X軸が斜めになってしまいます。

直角が出ていない要因の例。
緑の□がスクリューナットの位置

この場合には、片側のY軸を手回しして「OK」の状態にしていきます

結構地道な作業です。

より詳しい情報を知りたい方は、例えばAvalon TechのOpen Source Hardware日本語コミュニティの記事が参考になると思いますので、ぜひどうぞ。




【ワークの位置決め・固定をしやすくしよう!】

マシンの調整ができたら、今度は削る対象物(ワーク)の位置決め・固定がしやすくなる工夫を施していきます!具体的な方法は、使うワークのサイズや形状によって様々かと思いますが、今回はテーブルいっぱいに大きな板を設置することを想定して、準備を進めてみました。


まず、犠牲層にワークをクランプする仕組みを作っていきます。使うのは鬼目ナット。木材に埋め込んネジ穴(めねじ)を作るためのパーツです。様々な形状がありますが、できれば外側がネジ状になっているタイプ(Eタイプなど)を使った方が、綺麗に埋め込めると思います。

左:Aタイプ(下穴を開け、ハンマーで打ち込む)
右:Eタイプ(下穴を開け、六角レンチで埋め込む)

こんな感じで埋め込めます。
接着剤(木工用ボンド)を併用すると抜けにくくなりGood。

そしてこんな感じでワークをクランプします。
フライス加工時にはお馴染みの固定方法ですね。


次に、板の位置決めを楽にするための、肩当てようの突起を追加していきます。
やり方はいたってシンプル。犠牲層上面に角材を接着するだけ。

とはいえ、取り付け位置の調整には細心の注意を払います。なるべく直角・平行が出るように・・・。必要に応じて、軸の直角出しと同じ要領で、テストインジケータも活用します。

接着剤が乾燥するまで、動かないようにしっかり固定・・・

こんな感じで、大きな板を肩当てして位置決めできるようになりました!
(右が見切れた残念な写真でごめんなさい泣)




というわけで今回は、CNCルーターを使いやすくするための取り組みをあれこれ紹介してみました。今後公開予定の後編では、電気配線や、集塵装置関係の取り組みを紹介していきたいと思います。お楽しみに!

CNCルータの利用者も大募集中ですので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください!

それでは!

(サンドマン)


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