2021年7月28日水曜日

【太陽光発電】(12)バッテリーの直列・並列接続について考えよう!

バッテリーのつなぎ方、意外と奥が深い世界です・・・ 





どうも、東京オリンピックが盛り上がっていますね。そういえば、オリンピックの聖火は、ギリシャのオリンピア遺跡で、太陽の光から採火しているらしいですね。大昔から太陽光は聖なる力なのですね(笑)

さて、前回の記事では、ソーラーパネルの直列・並列接続に関するあれこれをまとめてみました。今度は引き続き、バッテリーの直列・並列接続について、考えていきましょう!

過去の太陽光発電関連記事はこちら!


【各バッテリーの電流・電圧特性を合わせよう!】

まず、バッテリー接続方法の原則から確認していきます。先日の記事でソーラーパネルについて説明しましたから、そこから連想できる方もいらっしゃるでしょう。
理論上はまさに連想いただいた通りで、バッテリーの場合でも同様に、
  • なるべく同じバッテリーを使う。並列接続する場合には、各系統の個数を合わせる。
  • 異なる種類のバッテリーを組み合わせる場合には、
    • 直列接続時:各バッテリーの電流(正確には容量)を合わせる。
    • 並列接続時:各系統の電圧を合わせる。
となります。あくまで「理論上は」です。バッテリーの容量についての考え方を知らない方は、こちらの記事をお読みください。これを図解すると、こんな感じになります。

全て同じバッテリーを使う場合の例。
(あくまで理論上の話です。)

異なる種類バッテリーを直列接続する例
(あくまで理論上の話です。)

異なる種類のバッテリーを並列接続する場合の例。
(あくまで理論上の話です。)

しかし、上記の方法を守ればバッチリ、というわけにはいきません。バッテリーの接続は、ソーラーパネルの接続以上に厄介者です。なぜなら、ソーラーパネルと違い、
  • 化学反応を使っている→経年変化のばらつきが大きく、管理が難しい
  • 充電と放電、両方のケースを考える必要がある→制御回路の複雑化
  • バッテリー自身にエネルギーが「蓄えられている」
    扱いを誤れば、燃えやすい/爆発しやすい
からです(あくまで個人的見解)。

それではここからは、バッテリーを直列・並列接続時に注意すべきポイントと、その対策について確認していきましょう。


【直列接続時の注意点:アンバランス】

まず、直列接続時の注意点から説明します。

直列接続されたバッテリーを充放電した場合、理想的にはすべてのバッテリーが同じように充電され、放電されます。
しかし実際には、バッテリーの元々の個体差や、劣化度合いの違いによって、充電具合、放電具合に違いが生じ、使い続けて時間が経過すると残量がばらついていきます。(アンバランス)
最初に同じ量充電してあっても、繰り返し使い続け時間が経つと、充電量にばらつきが生まれてしまう(アンバランス)

このばらつきが大きくなると、「バッテリーに電気が残っているのに放電できない!」「まだ充電できる余裕があるのに充電できない!」という事態になり、充電・放電効率が低下してしまいます。これを見過ごすと、場合によっては下図のように過充電・過放電が発生し、バッテリーの種類によっては火災や爆発の原因となることもあります
(ちなみに、放電しすぎてバッテリーの+極の電圧が0V以下になった状態を「転極」というそうです。)

アンバランス状態の直列接続したバッテリーを充電/放電した場合の挙動。過充電・過放電が生じるリスクがある

そういえば皆さん、乾電池は「古いものを新しいものを混ぜて使ってはいけない」という風に言われたことはありませんか?今回の注意点は、まさにこのことについて言っています。

ちなみに以前の記事で紹介した通り、1つの電池も、内部では複数個のセルを直列接続した構造になっていて、セルの劣化度合いにばらつきが生じると、同様の現象が生じる可能性があります。これをセルアンバランスと言います。

このようなアンバランス防止のためのシンプルな対策は、
  • 同じ種類の、同じ劣化度合いのバッテリーを直列接続する
  • 定期的にバッテリーを点検し、アンバランスが生じていたら補正する、または交換する
ことだと考えられます。

なお、鉛蓄電池よりもエネルギー密度が高く、アンバランスにより火災が生じるリスクが高いリチウムイオン電池では、セルアンバランスを修正する機能(セルバランス機能)を持った制御回路をセットで使うことが一般的のようです。この制御回路はBMS(バッテリーマネジメントシステム)と呼ばれ、セルバランス機能の他、充放電制御機能など、電池の管理に必要な様々な機能を担っています(例:富士通テン技報[1])。

「鉛蓄電池用のBMSはないのか?」と思い、色々調べてみましたが、商品や開発事例は全く見つかりませんでした。おそらく、鉛蓄電池の場合は均等充電(いずれかのセルが満充電となった後も充電を継続し、全セルが満充電となるようにする)が可能なので、わざわざBMSを使うほどではないということでしょう。鉛蓄電池の場合、満充電後に電気を加えると、水を電気分解する(以前の記事で紹介しました)わけですから、いきなり爆発するリスクは小さそうです。



【並列接続時の注意点:循環電流】

次に、並列接続時の注意点を説明します。

ただ単純にバッテリーを並列接続すると、系統ごとにごくわずかな電圧の差が出てしまうため、電圧の高い系統から電圧の低い系統に電流が流れ込む現象が発生します。この電流を循環電流と言います。電池自身も抵抗成分を持ちますので、循環電流の一部は電池自身で勝手に消費されてしまい、使用できる電気の量が大幅に減ってしまいます。また電池自身の劣化が加速する要因にもなります

循環電流のイメージ。

循環電流の影響により、実質的な電池の容量どの程度減少してしまうのかについては、四国電力四国総合研究所の論文[2]などを参考にしてください。

各系統を全く同じ種類、同じ劣化度合いの電池で構成すれば、最初は循環電流をほとんど防げるかもしれません。しかし、時間が経つにつれて系統ごとの劣化度合いに差が生じてしまい、結局循環電流の問題を避けられなくなります。

そのため最も確実な対策は、「並列回路にしない」または「循環電流を流さないように周辺回路を構築する」こととなります。具体的な手法がWeb上にいくつか紹介されていて、それぞれ長所・短所がありそうです。

① 接続する系統をスイッチで切り替える
最もシンプルな方法です。スイッチを入り切りし、充放電したい系統のみをチャージコントローラやインバータとつなぎます。それ以外の系統は回路から切り離し、並列回路とならないようにします。


手動のスイッチとしては、「バッテリー切替器」なるものが広く市販されていますので、簡単に実装できますね。(例:Marine-j.com[3]


自動で切り替えたい!という場合には、リレーやMOSFETなどの素子を使用すればよさそうですね。オフグリッドソーラーに使えそうな市販品は見つかりませんでしたが、参考になる開発事例は数多く存在しますので、参考にすると良いかもしれません。



② ダイオードを接続する
電流は、チャージコントローラ → バッテリー →インバータ の経路で流れて欲しいので、この経路上にダイオードを設けて逆流を防ぎます。
理想的には以下の図のようにダイオードをつければ、循環電流は発生しません。



しかしこの構成だと、当然バッテリーからチャージコントローラへの電流が阻止されます。よって以下の理由により上手く動作しません。
  • チャージコントローラ自身を駆動する電源をバッテリーから確保できない。
    多くのチャージコントローラでは、立ち上げる際に、「まずバッテリーに接続してから」ソーラーパネルに接続するよう指示されています。今回の場合はこれが守れていないので、チャージコントローラが正しく起動しない恐れがあります。
  • チャージコントローラがバッテリーの電圧を認識できない。
    電圧がわからないと充電電流を制御できませんので、正しく充電できなくなります。
これを解決するための現実的な着地点として、並列回路のうち1系統のみ、ダイオードを接続しない、という方法が考えられます。


これであれば、とりあえず動作はしますし、循環電流を減らすことができます。実際に製作した様子が旅人屋さんのWebサイト[6]で紹介されています。回路構築が楽(ダイオードを入れるだけ)で、手動切り替えの必要がないのが、この手法のメリットだと思います。
ただし、以下のデメリットがありますので注意が必要です。定期的に電池の状態を確認し、きちんと充放電できているか確認すべきかと思います。
  • チャージコントローラは、ダイオードなしの系統の電圧のみを監視して充放電制御する。ダイオード接続されている系統の充電が上手くいかない場合がある。
  • ダイオードなしの系統から流れ出す循環電流が防げない。
  • チャージコントローラの駆動電力には、ダイオードなしの系統の電力のみ使われる。そのため他の系統に比べ、ダイオードなしの系統のバッテリーは劣化が激しくなる。
  • ダイオード自身の抵抗により、充電効率が落ちる。

①で紹介した自動切替の仕組みを上手く組み合わせると、このデメリットを多少回避できるかもしれませんね。(今後検討してみたいです。)



③ バッテリーに流れる電流の向きを観測して、回路の切替を行う
①・②に比べ少々難易度が高く、洗練された方法です。並列接続されたバッテリー回路全体に流れ込む電流を観測し、電流の向きの応じて各系統につなぐダイオードの向きを同時に切り替える方法です。詳細は、やまかず太陽光発電所様のWebサイト[7]を確認してみてください。
バッテリーに流れる電流の向きを観測し、ダイオードの向きを切り替える仕組み(システムブロック図)特許公報より[8]

並列接続されている全ての系統にダイオードが付くので、循環電流は確実に阻止されます。また、ダイオードの向きを適切に切り替えることで、チャージコントローラの電力がきちんとバッテリーから供給されます。なお、この手法は特許が成立(第6074875号)[8]していますので、無断の商用利用は厳禁です。


【まとめ】

ここまでの内容をまとめますと、バッテリーの直列・並列接続のポイントは以下の通りになります。
  • なるべく同じ種類、かつ同じ劣化度合いのバッテリーを使用する。
  • 並列接続はなるべく避ける。
  • 直列接続時:同じ容量のバッテリーを使う。セルバランスが崩れていないか定期的に確認する。(BMSの構築もあり?)
  • 並列接続時:各系統の電圧を合わせる。回路切り替え、ダイオードなどを使い、循環電流を防止・抑制する。
私自身もこのあたりは実際の経験に乏しく、今回まとめた内容をベースに、今後トライ&エラーを繰り返していきたいと考えています。その様子は今後紹介できるように、頑張ります!


いかがでしたでしょうか?前回紹介した、ソーラーパネルの直列・並列接続に関する内容と同様、なかなか難しい内容になってしまったでしょうか?本記事をご覧いただき、少しでも参考になりましたら幸いです。

それでは!

【参考Webサイト】

[1]藤田嘉和ほか:「バッテリーマネージメントシステムの開発」富士通テン技報,Vol.34 No.1,pp. 60-70
[2]多田安伸:「蓄電池直並列接続時の特性と課題」,四国電力 四国総合研究所 研究期報101(2014年12月),pp. 1-15
[3]Marine-j.com 180103-バッテリースイッチ・電源切替装置
[4]DIY-Labo 車を便利にする電装DIY メインバッテリーとサブバッテリーで切り替えながら電源供給する方法
[5]まつらさんのHP SLエブリイホームメイドキャンパー メイン/サブバッテリーACC連動自動切替機の製作 MS-PSW
[6]旅人屋 太陽光発電(DIYで自作) 太陽光発電でのバッテリー並列接続
[7]やまかず太陽光発電所 日曜大工でお手軽に太陽光発電 パートⅧ 蓄電池の大容量化に欠かせない循環電流防止装置
[8]特許第6074875号 循環電流防止装置
(J-PlatPat https://www.j-platpat.inpit.go.jp/より検索可能です。)

※2022/02/06:鉛蓄電池のBMSが見当たらない理由について、頂いたコメントを元に内容修正しました。
※記事に誤りがありましたら、都度教えてください。修正いたします。

(サンドマン)

2 コメント

こんにちは。
鉛蓄電池にセル電圧調整の機能が付いたBMSが無い理由としては
均等充電と言う手法でセルのバラつきを補正するからかと思います。
要は一定時間過充電状態にする、と言うやり方なので
過充電でダメージを受けるリチウムイオン電池等では使えない方法なためBMSが必要になると解釈しています。

この均等充電と言う充電方式ですが普通充電とされる電圧が自動車始動用より幾分低めに設定されているフォークリフト用のような大型の保水式バッテリーでよく聞く手法なので
お使いのバッテリーの仕様や充電器の設定次第で特に気にする必要がない可能性も高いのではと考えます。

参考になるか分かりませんがこちらのURL貼っておきます。
https://ps.gs-yuasa.com/products/pb/ps_tokusei.php

名無しの権三郎様
丁寧なコメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。

鉛蓄電池にセルバランス機能つきのBMSがない理由に非常に納得がいきました。
鉛蓄電池の場合、確かに過充電が生じた場合には、水の電気分解を起こすだけですもんね。リチウムイオン電池に比べれば、過充電を起こしても安全ですよね。
ブログ本文の加筆修正をしようと思います。

「保水式」は「補水式」の間違いでしょうか。今回準備しているバッテリーは補水式ではなく、AGMタイプの密閉式バッテリーです。均等充電の可否や安全な方法については、これから詳細に確認してみようと思います。

ありがとうございました。


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